基調講演、対談

2025年10月18日(土)13時〜15時

日本アドラー心理学会 日本個人心理学会

 

オープニングプログラム

八巻秀先生 追悼セレモニー

 

 

基調講演&対談

「日本におけるアドラー心理学の発展の可能性について語り合う」

~現状から未来に向けて〜

 

基調講演① 向後千春氏

基調講演② 鈴木義也氏

 

対談

向後千春氏 ✕ 鈴木義也氏

 

 

基調講演①

向後千春氏

 

日本でのアドラー心理学は1980年代に野田俊作氏によって本格的にスタートし、主として親教育、学校教育、カウンセリングの領域で実践と普及を積み上げていく。2013年の『嫌われる勇気』がミリオンセラーとなったことで世間的にもアドラーの名前が知られるようになった。2025年に日本アドラー心理学会と日本個人心理学会が合同で大会を開くことは画期的であり、分断されていた日本のアドラー実践者たちを広くオープンな関係で結びつけるきっかけになるだろう。これからの展望として次の3つの論点を挙げたい。一つ目は「研究する実践家」の育成をしていくこと、二つ目はアドラーの名前の濫用をやめて原点に立ち戻ること、三つ目は「生きることの科学」としての再定義をすること。

 

向後千春(こうごちはる)

1958年生まれ。早稲田大学名誉教授。博士(教育学)(東京学芸大学)。専門は教育工学、教育心理学、アドラー心理学。著書に『幸せな劣等感』(小学館新書, 2017)、『人生の迷いが消える アドラー心理学のススメ』『アドラー”実践”講義』(技術評論社, 2016, 2014)など。

 

 

基調講演②

鈴木義也氏

 

昔々、講談社から「人類の知的遺産」という大思想家紹介シリーズが発刊された。その中にはフロイトも加えられていた。アドラーも本来はこのシリーズに入れて然るべき人類の知的遺産である。それは歴史遺産や標本のように保存するのみならず、文化遺産として継承し、共有し、使用し、発展させていくものである。そうしてこそ人類の共通善に資することになる。人類の知的財産としてアドラー心理学を持続可能にしていくことは私たちの使命である。そのための方法として大学、学会、団体、資格などがある。これらを通して現代や次世代において、どのようにアドラー心理学が生存(サバイバル)し、かつ、共存していくことができるかについて述べたい。

 

鈴木義也(すずきよしや)

東洋学園大学、しまうまカウンセリング、精神科クリニック、日本個人心理学会常任理事、日本催眠医学心理学会常任理事、臨床心理士、公認心理師。他に好きなのは家族療法、ブリーフセラピー、ナラティブセラピー。

 

シンポジウム

2025年10月19日(日)13時〜15時

日本アドラー心理学会 日本個人心理学会

 

シンポジウム

「共同体感覚からみる今と明日、そして人類の未来」

 

シンボジスト

梅崎一郎氏 ✕ 舛上豪紀氏 ✕ 吉田光成氏 ✕ 浅井健史氏

 

司会 梶野真氏

 

 

シンポジウム

「共同体感覚からみる今と明日、そして人類の未来」

 

このシンポジウムでは、「共同体感覚」というテーマを通して、アルフレッド・アドラーが本当に伝えたかったことを改めて考え直し、今と明日、そして人類の未来に向けて、私たちがどのように生き、どのように社会を築いていくのかを共に考える機会にしたいと考えています。アドラーが提唱した「共同体感覚」は、非常に広範で深い意味を持っています。だからこそ、私たちは安易に結論を出すのではなく、対話を通して共に考え続け、深めていくことが必要です。アドラーが80歳、100歳まで生きていれば、どんなふうにこの概念を定義し、発展をさせたでしょうか?そして、どのように実践すべきだと考えていたのでしょうか?こんなふうに想像して、著作に書かれていないアドラーが本当に伝えたかったことや、これらの問いを深く掘り下げ、このシンポジウムを通して、参加者の皆さんにも考えていただきたいと思います。

 

臨床家であり、理論家でもあったアドラーの姿やあり方に思いをはせてみると、本シンポジウムでは以下のような問いを考えることできるのではないでしょうか。まず、私たちは日々出会う人々の困難さに、どのような共同体感覚という概念を指針に持ちながらいかに向き合っているのか?そして、今後はどのように共同体感覚を捉えて、いかに向き合っていくことが良いのだろうか?さらに、私たちは共同体感覚を指針に持った日々の実践を通して、いかに人類の未来に貢献していけるのだろうか?

 

このシンポジウムでは、両学会から実践・研究を続けている専門家から、ベテランと若手の各2名からなる4名の方に登壇者をお願いしました。現場での具体的な経験や実践を含め個人心理学だけでなく、社会心理学やコミュニティ心理学、そして、 哲学的な視点から、共同体感覚をどのように捉え、どのように実践をしているのかを発表をしていただきます。「共同体感覚」を深めるプロセスは、個々の生き方や社会にどのような影響を与えるかを考えるきっかけとなり、より良い社会、そして人類の未来を共につくる第一歩になるのではないでしょうか。このシンポジウムが、皆さんにとって「共同体感覚とは何か?」を再考し、実践や臨床、研究、さらには自身の生き方そのものを見つめ直す貴重な機会となることでしょう。

 

 

 

〇登壇者紹介(アルファベット順、敬称略)

 

浅井健史(明治大学):

学生時代に星一郎先生よりアドラー心理学の薫陶を受けました。現在はいくつかの大学で臨床心理学やコミュニティ心理学を教えながら、日本語教育の分野で臨床実践を行っています。アドラー心理学の思想、理論、実践を全体論の視点から再構築する作業に取り組んでおり、今回のテーマである共同体感覚についても、「包括的構造モデル」を提示して理論的な研究を進めています。

 

 

梅崎一郎:

1962年生まれ、徳島県三好市池田町、出身、高知大学理学部物理学科卒。平成元年度から令和4年度まで徳島県職員(心理)として児童相談所、精神保健福祉センター、発達障碍者総合支援センターなどにおいて心理士、ソーシャルワーカーとして相談支援業務に従事してきた。令和5年度より社会福祉法人矯風会が運営する児童養護施設「徳島児童ホーム」の施設長に就任し現在に至る。アドラー心理学を平成2年から学びながら公的相談機関のフィールドにおいて研究実践を重ねている。またライフワークとして韓氏意拳や兵法部学研究会、システマなどの武術を学びながら武術の稽古方法や自身の稽古の経験をアドラー心理学の実践の中に取り入れながら独自のアドレリアンボディワークを開発し、様々な支援方法に応用できるように研究している。現日本アドラー心理学会会長、日本アドラー心理学会認定心理療法士、精神保健福祉士。

 

 

舛上豪紀:

学生時代に中島弘徳先生にアドラー心理学があることを教えていただき今に至ります。全ての学問が繋がるような形を探しています。アドラー心理学でも生物学、脳科学、哲学など様々な分野と並べたり、繋げたりして色々な気づきを得られればなと思い考えています。共同体感覚はアドラーの思想の中でも特徴的で興味深いものなので、色々な視点で考えられたらと思っております。

 

吉田 光成(専修大学大学院):

臨床社会心理学とコミュニティ心理学を専門とし、異質な他者同士の関係から見る個人と集団の適応と力動性に関する研究を広く行っています。大学での教育と並行して、研究者として複数の企業やNPOの事業内容の実態把握や効果測定の業務に従事しています。個人心理学は、箕口雅博先生との出会いをきっかけに、箕口先生、浅井健史先生から薫陶を受けてきました。私にとっての個人心理学の研究は、コミュニティ心理学や臨床社会心理学など他の心理学や学問との対比から、現代的な位置づけを再考する取り組みだと考えています。以上の観点から、共同体感覚概念や目的論などについて個人心理学会で研究発表を行っています。

 

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主催|日本個人心理学会 大会実行委員会